第14話

思い出話のお喋り付き徹夜作業が終わり、一行が暇乞イトマゴいをする時がやって参りました


出発の時間に窓から見える空は、それは美しい薄い紫色、えも言われぬ青みがかるアケボノの光を放っておりました



丁寧に大切に調合したスパイスとガラムマサラの別々の包みは、先ず一つ目は細かい文字で記した手紙と共に鳩の翼で運搬します。


二種類のスパイスは正確に計量した一食分だけを薬包紙に包み、更に安全の為油紙でギッチリ巻き伝令管に密封。

最も優秀な最後の鳩ダイヤモンド号が、荒れる天候、昼夜を徹して鳥にとっても命懸けで故郷に運ぶ手筈です。



残りは主従で二分割し、保険「もしもの事」を考え


万が一、どちらに何があっても確実に、病の床で待ち望む姫に届けるよう固い意思で約束を交わします


つまり全員、残らず責任重大でした。



「では一つだけ私からもご提案です


夜も明け始めて、後ほんのひとときで今日最初の御来光が空を彩ることでしょう


それまでは


金色の朝日が必ず差し込むまで絶対に鳩、この子をお放しにならぬようご忠告申し上げまする」


「あいわかった

貴女様には本当に世話になった

この借りはいつか絶対にお返しする所存です」


「いえ、もうわたくしめは充分でございます

思い残すことはございません」



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