第12話

美味しい食事後は、いよいよ本命の依頼をお願い致しました。


女性はふむふむと頷き後片付けを側付きに任せると、自らは繊細な作業に入ります。


先ずは彼等が遠い国より買い求め、遙々持参した貴重な香辛料類をテーブルの上に全部残らず並べました。



「素晴らしい鮮度の良い物ばかりですわね」


ひとつひとつ丁寧に指先で摘まむと確認し、ここで漸く幾枚かの小皿と、小さな分銅が可愛らしい極小型の天秤を戸棚より用意しました。


「カレーをお造りするには簡単なルールがございます」


「というと?」

「ザックリ云えばスパイスの入れ方として、三段階の手順を踏むのです


最初にまず原型そのままの形〜ホールタイプの物……!


クミンシード等、油に香りを移すものをご用意下さい


香味野菜のニンニクも焦げやすいので、まず最初に少量、タップリの油でカリリとさせたら焦げる前に取り除きます


同じ油で分量相応スパイスをジックリと炒め、スパイシーな香りを強く引き出すのがコツです


ニンニクはお強いのでお子様には避けた方が宜しいでしょう

体質的にもお嫌いでしたら無くても別に構いません



次に

代表的な乾燥粉末にした香辛料類を、お好みの食材と共に追加し煮込みます


火を止める寸前にガラムマサラを一振り、ササッと熱を加えいよいよ完成となります」


「ガラムマサラとは?」


「幾種類ものスパイスを調合致しました万能調味料のアダナです


各家庭それぞれ

門外不出の『秘伝』隠し味、特別なスパイスですね


最終的な味が決定致します元なのです


ですので〜

お姫様の仰りました『お味』は、きっと私の普段使いのスパイス配合でおよろしいかと?」


「そんな貴重な秘伝を!?」


「ええ

ですがわたくしにも交換条件とまでは申しませんが、個人的なお願いがございましてよ?」


「それはどんな?」


ファハドは思わずドキッとし唾を飲み込みました。



しかしどんな突拍子もない奇天烈な願い事も、愛する人の命を救う為ならば、全力でお引き受けし、叶えんと心より誠実にお思いになられたのです。



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