第11話
「お初にお目に掛かります
お姫様の為、お力添えをお願いをしに参りました
〜我々が来ることをご存じで?」
「ええ
だから案内役を差し向けましたのよ」
「?村長殿より御使者が?」
「そうですねぇ、マァそういう事にしておきましょうか」
?????
『ウーーーン』
……
〜なにかが少し
微妙〜〜〜に理屈として噛み合っていない気が致しましたが。
グツグツと目の前の暖炉に掛けられた大鍋からあふれ出す、美味しそうな誘惑
余りにかぐわしい良い香りが零れ落ちるように漂い出すせい!
「まいっか」……
ファハドは、不審は頭の隅に無理矢理追いやりました。
身分の高い子息といえど、未だ未だ食べ盛りの若者です
疲労と空腹の頂点で、ぐぅうううとお腹と背中がくっつきそう!!
今にもバッタリ、床に倒れて死にそうなのでした
「戸口にその様に立ちっぱなしもなんですので
こちらに座り、温かな食事でもお召しになっては如何でしょうか?
鍋で丁度、若いカモシカ肉のカレーが良いあんばいに煮上がっておりますから
ぁあそれから籠の中の可愛らしい子にも、塩無のピーナツがございましてよ?」
「かたじけない
〜では恥ずかしながらご相伴に与ります」
「ふふふ、随分礼儀正しい御方ですこと!
わたくしは貴方様のこと、大いに気に入りました」
大きな鉢になみなみと暖炉より取り分けられた、タップリのカモシカ肉のカレーは肉がトロトロに柔らかくホクホクで堪らなく美味!
どうしたことか肉にどんな下処理がされているのか、少しもジビエにありがちな、食べにくい匂いなど致しません、唯々蕩けそうに味覚を癒やすばかり。
若君は凄い勢いで、汁にしっとり大判に焼き上げられたホカホカのナンを浸す間もなく木の匙でペロリと食べ尽くしました
「おかわりは如何です?」
「宜しいのですか?!」
「ええ」
「では!!」
主従は噂に聞きおよぶ魔法のスパイスカレーの威力をしみじみ味わい、心の底からジーンと幸福に満たされました。
若君は故郷の辛い病の床に伏す大切な人に、是が非でも同じ味を食べさせたいと心底願ったのです。
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