第10話

よれっよれの疲れ果てたファハドら一行は、無口な背の高い案内役のリードで温かな明るい住居に通されました。


「いらっしゃいませ、この様な遠きあばら屋まで」


ハッとファハドが顔を上げると

柔らかな微笑みを向ける美しい女性がひとり、優しい笑顔を向け立っていました



流石に深い皺をいくつか皮膚に走らすものの

腰も決して曲がらず極上に品良く、足腰も未だしっかりさせているように見えました


なによりも姿勢もピンと真っ直ぐ!!

驚くべき、かくしゃくとした女主人でした


〜伝聞では、最低でも90の齢をとっくに


ーーーいいえ実際は、計算では100歳すらをも越えているは明白です


にわかには信じられません

ファハド達はハタと顔を見合わせ、眉を寄せ困惑の色を隠せませんでした



「〜お坊ちゃま、本当にこの御方が我々の目指すお方様でございましょうか?!」


「間違いないはずだ」


「いえーーーとても

こう申してはなんですが


わたくしめがお妃様よりお伺いしたイメージとは全くの別人、思い浮かべる想像と違い過ぎます


ええ、私の母者よりもこのお方様の方が、うんとずっと全てがお若いでしょう


下手をすれば今現在の我々よりも、ご壮健ソウケンにさえ肉体的にもお見受け出来るのですが……?!」


「ぁあ相違ない、同意する。

絶対に若いだろう

私も実は非常に驚いているのだ


想像するに、このような厳しい場所で逞しく従僕とだけで女一人で生き抜くと心に決めた以上、怪我や病にかからぬよう自制しておられるのだ。


予防医学として御健康には人一倍、繊細に日々気を配られているのだろう。


今のあの麗しきお姿は細心の鐵の努力の賜、結晶に相違ないのかも知れぬな」


「きっとそうでございましょうねぇ」



ファハドは強く気を取り直し、キリリと姿勢を正すと恭しく身分等々自己紹介を披露致しました。


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