第3話

この日、フミさんと俺は約束通り、オヤッサンに言われたので行くことにした。俺はオヤッサンのとこに断られても仕方ないと思い、フミさんも実習だけ受け入れてくれたことを感謝するという。

そしてオヤッサンのとこにいった俺は驚いてしまった。お兄ちゃんという子供、その子は俺と友達になった子だった。

「オヤッサン、どうしたの。」と聞くと「コンちゃん。有名になったね。」という。「僕、敬っていうんだよ。テレビ見てたの。そんときにお兄ちゃん見た。テレビで見たお兄ちゃんもかっこいいけど、本当のお兄ちゃんはもっとかっこいいんだもん」というと、母親が「この前は本当に助かりました。対応してくださって。あれから怒られずにすみました」という。「いえいえ。こちらこそ、僕は子供好きなんで、業務時間中に出会うとついこちらから声をかけてしまうんですよ。今回は僕のほうこそうれしかったですよ。」という俺に、オヤッサンは「コンちゃんは子供が大好きで子煩悩というか、子供が来るとよく話しかける。そんなコンちゃんの人柄の良さはうちの従業員は慕ってるらしいのだ。あれからうちの従業員と話をしたんだが、うち従業員も接してみてわかったって言ってくれてね。特に販売に来る人からお金の計算が速いっていうんでね。別の従業員と違って正確だからいいっていうんだよ。それとコンちゃんが車いすでも出来ることがあるっていって、うちの従業員たちもコンちゃんを見て、いい刺激になってるらしいから、うちとしては採用したいんだ。フミさんどうだろう」と聞くと、「いいんですか。そのまま採用していただいても」というフミさん。「ああーむしろコンちゃんがいいってなら、明日からでも構わないぞ」というと、「俺、嬉しいです。ありがとうございます。」というので、「コンちゃんも、しんどかったら言ってな。無理にさせることはねえとは思うけど」というおやっさん。

すると「おにいちゃん。嬉しそうだね。」という敬君。母親はその時俺の顔を見て真っ赤にしていたそうだ。

フミさんが今日は僕がおごるから近藤たくさん頼めよ。というのでびっくりした。そっか。フミさんともお別れかと思ったが、フミさんは「そんなふうに思うのやめてくれよ」といい、俺の心を見過ごしていたのだった。

「俺はお前の支援員だけど、お前の友達でもあるんだ。もしお前さえよければ、また子供と妻とも会ってやってくれないか。それにまたボッチャつづけるんだろう」という。

その言葉にフミさんは俺の支援者である前に相談できる一人の友達であるということを誇りに思った。「俺もこれからもご迷惑とかかけるかもですけどお願いします」といった。

そして門出を祝い乾杯をした。

近藤保(たもつ)はこの日新たな人生をスタートさせた。

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