生い立ち

第11話

布団の上で寝てると朝、鳥がチュンチュンと鳴く声で目が覚める。熱もさがり、起きようとする私を椿が止める。

「ああーお前まだ起きるんじゃない。横になってろ」と言われて

「うんわかった」といって横になる。

「お前、昨日からなにも食ってないんだろう」といっておかゆを作ってそばに置く。

食べるかというと彼が器に入れ、スプーンですくいさましてから、食えと私のほうに差し出した。

食べさせてもらうのは悪いと思ったので、「自分で食べます」というと、「ダメだ、手を縛るぞ」と言われたので、「それは嫌です」というと「なら食べろ」と言われたので食べさせてもらうことになった。

はじめは食べていた私がもうこれでというと、まだ三分の一だぞというけど私にとってはもうこれが精いっぱいで。

まあいいかと彼が方付けてくれた。

「さあてお前に聞きたいことがある」っていうので、彼に聞くと、「お前今までどんな生活してたんだ」と言われた。

彼は私の生い立ちが知りたいみたいだ。

自分の生い立ちを話すと、嫌われてしまうかもしれない、そう思うと、話したくなかったが、話せといった以上は話さないといけない。そう思った。

「私のお父さんはマツ、お母さんはカナコという。結婚して私が生まれたの。お父さんは私をなくなるまで私の面倒を見てくれたの。私が幼いときに父が亡くなったの。その後、母と二人で生活するようになったんだけど、なぜか母は私をよく思わなかったみたいで、私を世間に見せるのをいやがった。ある日、あなたは今日から外には出さないわっていわれて、お母さんは私の部屋に鍵を付けて足に鎖をつないでその部屋だけで動けるようにされたの。トイレやお風呂やキッチンはちゃんとあったから生きてこれた。「どんなにつらいことがあっても生きなさい」って父は言っていたの。お前ならそれができるからって。多分父は私の身を一番に案じてたから、お父さんはいろんなことを教えてくれたと思う。生き延びるために、情報屋であった父の生き延びる方法を聞くことが出来たから、ちゃんと今まで生きてこれたの。そんなある日母が外出した時に木の上に登ってた少年を家に入れたの。その少年はご飯を食べて、少しお話して、最後に彼が私にクマを渡して帰ったんだけど、名前は名乗らなかった。多分相手も私の名前を知らないの。

椿が小声で「外の世界を知らない少女」といったのが聞き取れなかった。その後カシが来て私を救出してくれたことをいうと、「よかったな」という彼はどこか悲しそうに感じた。

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