第88話

その結婚式の日から、再び門口から連絡はなくなる。

勿論、不意に目の前に姿を現すこともなくなった。


年間リースを解約したアクセスリースにも立ち寄ることはなくなったし、プロポーズされたのも夢だったのではないかとさえ思う。



部屋のクローゼットにはまだその夢が封じ込められている。

クリーニングにまだ出していないドレスと、パールのネックレス、

……そして、奇跡のようにピッタリ合った靴……。



身体で返せとか言いながら、何も言ってこないのは、やっぱり……。




思い出すのは、勝ち誇ったような見合い相手の顔と、……鼻の下を伸ばした門口の顔。



イラついてしまうから考えないようにしてるのに、神様はイジワルだ。




家族をも巻き込んで、私を更に追い詰める。






ーー営業所の預金残高が合わずに、残業して帰宅してきた夜だった。

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