第86話

スーパーゼネコンの人間との挨拶を済ませた門口が、見合い相手に気が付いてちょっと気まずそうにしていた。



「……何か言われたのか?」


耳打ちで私に聞いてきたけれど、




「別に、この間と同じそのターコイズのドレスがとてもお似合いだと言っただけですよ、30代だと淡いカラーを着こなすのが難しくなりますから」




聞こえていた美女は臆することなく皮肉を言う。



「ちょっと!あんたさっきからっ……」


それにキレたのは京子で、止せばいいのに、美女の肩を掴んで反撃しようとした。



「やだっ!痛いっ!」


大袈裟に避けた美女のカモシカのような細い脚がよろめいて、



「きゃっ……!!」



門口の胸と腕の中にドッと倒れこんだ。


「……あ」


誰もが見たら認めるだろう美男美女の抱き合う図が出来上がる。

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