第85話

聞き覚えのない声だったけど、明らかに私に向けられてると思い、振り返ると、



「この間と同じドレスだから直ぐにわかっちゃった」



例の、門口の見合い相手が立っていた。



「……あ」


うわー、相変わらずの美貌っぷり。

私のように、この間と同じドレスを着ているわけじゃない。


パステルカラーの春らしいアンサンブルのスーツで、それが爽やかで若さを強調していた。



「……ど、どうも」



ばつが悪い。見合いを壊すために用意されたダミーの恋人をやらされた私。



その時と同じドレス。






「真樹、誰、この子」


京子達が、圧倒的な美しさを振り撒く見合い相手を興味津々で見ていた。



「あ、う、」



なんと言えば……。





「青さんに弄ばれてる″真樹″さんとおっしゃいましたっけ?


私、あなたみたいなオバサンに負けたなんて思ってないですから」



オタオタしてる私とは反して、強気で押してくる美女。




「家に縛られたくない青さんの箸休めとして、せいぜい身を尽くしてやってくださいね、利用価値のあられる間は」




初めて口をきくのに、ぐさりと尖った言葉を吐きかけていく。





「……おい」



そこへ門口が戻ってきた。

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