第83話

ヒールが折れそうな位細くて、そしてラメの入った光沢が美しいベージュ?ゴールドのパンプス。



「お前が今履いてる三センチヒールじゃドレスが活きないし、何よりパールの白とドレスのターコイズとの配色バランスが悪い」



「……お呼ばれマナーは学習したんだけど」



それでも、男である門口に敵わなかった。



「俺は個人の家を建てる時に外壁や壁紙のコーディネートもやるから、バランスとか考えるの得意なんだよ」



「なるほど」



家と服じゃ違いそうなものだけど、




「見た目は気に入ったので、履いてみていいですか?」



「どうぞ」



とにかく、この靴は気に入ったので合わせてみることに。





「うわ、ピッタリ……」




恐ろしいくらいのバッチリな履き心地。





「そりゃ良かった。合わないときのために絆創膏は持ってきてたんだけどな」


「……マメですね」


「徹底してるんだよ」


「……これ、おいくらですか?」


「金はいいよ、また身体で払ってもらうから」


「か」



赤面する私を見て笑った門口は、迷うことなく京子の自宅までも辿り着く。



「アラサーばかりの女に囲まれるのも悪くないな」



なんと、京子と一緒に、他の友達も門口の車を待っていた。






「噂に聞いてたけど、真樹の彼氏、超イケメン!!」


「芸能人ですかっ?!」



そんな初対面の友達にも、門倉は丁寧に名刺を渡して挨拶をしていた。




「個人の家の建築も内装もやってます、ご縁があれば……」





……まんべんなのは靴だけじゃない……。


門口が送迎をしてくれているのは、こういう機会も逃さない仕事人間だからなのでは? とも思ってしまった。

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