第82話

「靴、それは合わせて買ったのか?」


運転をしながら、門口が私の足を見ていた。



「いえ、これは前から持っていたフォーマル用の靴です」


オフィス用ではない黒のパンプス。

何にでも合うから重宝する。




「だよな、それだけダサいもんな」


「は」



何よ、出掛けにそんなダメ出しいる?

ムッとしてそっぽを向いていると、



「後部座席にそのドレスに合うパンプス買っといた、気に入らなかったら捨てるから、履いてみろよ」



門口がルームミラーを傾けて、私にそれが見えるようにしてくれた。




「……私の足のサイズまで京子に聞いたの?」



「いや、この間、足を舐めた時にサイズを覚……」

「はいっ! 貴方のエスバー的な観測力はわかりました!」




まだ、朝の時間帯にその夜の話は恥ずかしい。




箱を開けたら、まるで舞踏会のデビューのためのような靴が出てきた。

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