第74話

「ちょ、待ってよ! お母さんの形見じゃないの?! なんで資源ゴミで出してるのよ?!」



時々、お母さんのタンスを開けて、風を入れて虫除けしてた。



その時にお母さんの匂いがして、懐かしくて色んな事を思い出してたのに。




「……何で怒ってるんだ? 三回忌も過ぎたし、真樹だって母さんの服なんか着ないだろ?

持ってたって場所取るだけだ」



今度はちゃんと聞こえてたのか、それらしいことを言って、ゴミ捨て場に持っていく。




「お父さんっ!」


まだ、三年だよ。


あんなに仲が良かったのに、そんなに簡単に思い出も捨てられるものなの?


もしお母さんなら、お父さんのものそんなにあっさり捨てたりしなかったよ。




ガシャン……と、ゴミ捨て場の金網の蓋が閉まる音が聞こえた。


捨てたんだ。



「ちょっと離れたら……全然聴こえないんだから……」




……やっぱり、女と男じゃ愛情に差があるの?



ずっと愛されない結婚って、なんなんだろ?





″お父さんとは会話が成り立たなくてねぇ″





生前の、お母さんの寂しそうな顔を思い出した。

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