第72話

部屋の外から、お父さんの声と、ドアを激しく叩く音でようやく目が覚める。



「ヤバい!」



お風呂、朝から入ろうと思ったのに!


起き上がると、自分の髪から、門口のVVLGARIの匂いがして妙な気分になったけれど、余韻に浸っている場合じゃなかった。



顔だけ洗っていると、



「昨夜、お前を送ってくれた車……この間も家の前に止まったよな? 新しい彼氏か?」



背後からお父さんが聞いてきた。



そうだ。


お父さんにもちゃんと話なければ、と思っていた。

世間的には良縁な話があることを。




「お父さん、実は、プロボーズされてるんだ」




朝から出掛け前に、人生最大の報告をする。

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