第68話

深いキスをしながら、克己とのキスを少し思い出していた。


私はそんなに恋愛経験が豊富ではなかったから、比較しようがなかったけど。

多分、キスもセックスもする場所も、克己は普通だったと思う。


私はそれに満足していた。



「ここがダメならホテル行くか?」



「……え?」


唇を離すと、溢れる唾液で口元がベタベタになった。


簡単にほどけて、ビル隙間風に任せて揺れる制服のリボン。


門口が落とす視線の先には、襟口から覗く下着の一部があった。



この人、とりあえずシたいだけ?


そう取られかねない言動をしてることを自覚してるのか、



「結婚も恋愛も、体の相性を大事にする女もいるだろ? 確かめてから断るってものありだと思うぞ」



満月の夜の暴走を、私の為のように言う。


でも、言ってることは間違ってはいない。



「……そうですね……」



「決まりだな」





昔の人は、なぜ、そんな大事なことを結婚初夜まで先延ばしにしていたんだろう?

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