第66話

まさに覆い被さるような唇。

久しぶりに感じる男性のザラリとした肌。


温かい頬、こそばゆい湿り。


あっという間に力が抜けていく。



身長差、およそ三十㎝。

長いキスは、私の首も門口の首にも負担をかける。



「ま、まだ返事もしてないのにっ」



顔を背けて、ミントの香りのする門口の唇から必死に逃れる。



「キスから気持ちが高まることだってあるだろ?」


「そんなことより、ここ、歩道から丸見えです。  ハレンチなお化けがいたって噂になりかねませんよ」



「あー、それはオープン前から良くねーな」



笑った門口は、私を抱きかかえるようにして、現場の隅の簡易トイレの裏へと移動。




まだ抵抗する私の両腕をしっかりと押さえ込んで、フェンスの方へと押し付けてきた。



ドキドキを通り越して、ちょっと怖くなった。

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