第63話
「だてにお局やってるわけじゃないので」
「自分で言うくらい割りきれてんなら上等だな」
静かになった現場で、大まかな金額を打ち出した請求ソフトの画面を門口に見せつけた。
「……すげー金額……」
営業マンに頭きて、うちとの契約を破棄すると言った門口も、想定よりかなり多めの請求額だったからか絶句していた。
「うちのを引き揚げた後、また他社から建機を搬入されるんでしょうけど回送代だけでも2倍になりますよ? それにうちよりも新しい機械が一見多そうですが、うちの中古を買い取ったレンタル建機の会社は多いですし、何より県内に7つの営業所がある建機レンタル会社は他にありません。三月の建機不足の時期にだって、貸し出しをお断りしたことがないほど、量も種類も豊富にあります。
それでも契約を破棄しますか?」
どんなに有能で業界で注目されていた社長でも、実際には会社を立ち上げてからの日は浅い。
そして、何よりも若い。
アクセスリースが老舗として生き残ってきた理由なんてきっと良くは知らないはずだ。
「お前、仕事の話だと饒舌になるよな」
門口が脱帽したかのようにヘルメットを脱いで下に下ろす。
「社長ー、そろそろ、詰め所施錠しようと思いますが、どうされますか? まだそのねーちゃんと交渉続けますか?」
同時に現場監督から声をかけられ、
「いや、もう終わりだ」
と、返事をしていた。
「もうだいぶ暗くなったし、直帰すると会社に連絡してみたらどうだ?」
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