第61話

現場監督は別のトラックで来社していたらしく、車内は二人きり。


「……本当にリース契約、破棄するんですか?」


「あぁ。安さや近さ、機械の豊富さが魅力だったが、社員がぼんくらばかりでいい加減頭にきた」



「……スミマセン」


「この地域、建機のレンタルがいくつか潰れて、アクセスリースはやや殿様になった気持ちでいたんだろ?」


「……そんなこと……」



あるかもしれない。


リーマンショックの時、海外に手を伸ばしていた大手のところ、倒産したもんな。




「震災の復興やらで建機レンタルのありがたさが分かった背景もあるしな。

だからといってお前んとこズサン過ぎるよ」




車を運転しながら、本音を語る門口。



「……確かに。営業は新規を取る必要のないルートばっかだし、甘く見ていたかもしれません」



この人がうちの社長だったら、随分と違っただろうなぁ。




「お前は」


「……はい」


「結婚したら寿退社をしたいタイプか?」



「はっ?」


急な話の変わりように、思わず声が裏返った。




「まだ働きたいなら、お前は、俺んとこで働いて貰っていいけどな」



「……はは」



夫が上司とか嫌だよ。




「少しは考え、まとまったか?」


「ま、まだ一週間しか経ってないので」



だけど、この人、私にプロポーズしたのは本気だったんだね。



「そうだな、休み中にデートすれば良かったな」





私、この人のことまだ好きになってないのに。

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