第52話

「無理です、お断りします!」


私がどんなに女子力低く気を遣わないタイプの人間だとしても、



「現実を見てくださいっ! 結婚の以前に交際したとしても、かなりつまんない女ですよ」



趣味までなくても、時間を潰すのはゲーム、最近はオトゲーしかしていない。


そして、そんなに社交的でもないから遊ぶのは限られた友達とペコばかり。


本当に何の取り柄もない地味な28才、今年29才になるアラサーなのよ。





「今日 半日過ごして俺はつまんなくなかったけどな。むしろ新鮮で良かった……」


「……そ、それは始めだけですよ」


「何より、珈琲をあんなに美味く淹れられる女なんだから、きっと料理も上手なんだと推測できる」



「……」



確かに、お母さんが亡くなってからは料理の腕は上達したけれど。




「森山家の長女だって問題も、俺が実家と縁を切ったら解消できる」



「……え」



縁を切る?



ちょ、

そこまで言い切る?




「私が大工の家の長女だってことも調べてるんですか?」



「当たり前だ」



「……」




この人、やっぱり 怖い。





「工務店の跡継ぎにはなれないけど、俺の会社とタックル組んで、斡旋したりサポートをしてあげることも出来るし、元気なうちは作業員として来てもらう事も出来る」



だけど、





「即答で断る理由はないはずだろ? 大人なんだから、考えればいい」





″理想の結婚″ というものがあるとしたら、

これなんじゃないかと思えてきた。

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