第49話

「え」


門口の視線の先は、食事を済ませて席を立つ克己に向けられていた。



「あっちもお前見て、幽霊と遭遇したような顔してたぞ」



「……か、山口さん」

「…」


ばつが悪そうに、若い彼女と私達の席の横を通る。




「……こんにちは。門口さん」



お客様である門口に挨拶をして、″なんで二人が?″ みたいな表情を浮かべている。



「あぁ、アクセスリースの山口くんだったっけ?」


「……はい」


担当の営業でもないのに、門口は克己の名前を覚えていた。

殆ど接していないのに。

やっぱり侮れない。



「お二人はプライベートで会うような関係なんです?」



克己もそのまま行ってくれればいいのに、当然の疑問を投げ掛けていた。




「い……や、あの」


もう関係ないけど、誤解はされたくない私に反して、



「独身者同士、何の問題もなくない?」



門口は意味深ともとれる答え方をする。


克己の顔が歪んでいくのが分かった。





「森山さんは、相手によっては随分とドレスアップする女性だったんだね」

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