第42話

″黙って頷いてればいいから″



そう言われたのを思い出して、きごちないながらも少しだけ微笑んで大きく頷いた。



「……どちらのお嬢さん? おいくつ?」



金持ちなだけに、金持ちの家の娘としか交際してこなかったんだろう。


門口ママの品定めをするような目が怖い。



「大した家の娘じゃない。真樹は28歳だ」





あんたが言うな。


それに何で私の歳を知っている?




「 青のお見合いの現場に現れるということは、ちゃんと先を考えてらっしゃるってこと?」



仕方ないので、それにも大きく頷いた。



「てことで、相手の女には断っておいてよ」


「あ、待ちなさいっ!青っ!」



色々聞かれる前にと思ってか、門口は私の肩を抱いたまま、レストランを立ち去ろうとした。



そこへ、



「遅れて申し訳ありません!」




また一人着物を着た夫人と、私と同じカシュクールのドレスを着た若い女が現れた。




私なんかと桁違いにドレスの似合う細身のスタイル、そして、茹で玉子を剥いたようなプリンとした肌。


何より、美人ーーーー


きっとお見合い相手だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る