第35話

……と、思っていたのに、


「ちょ、何で中まで付いてくるんですか?!」


門口ってば、ファミレスのジョイジョイまで付いてきた。



「お前の友達に謝っておこうと思って」


「は? 何を?」


「俺が散歩に誘ったせいでお前が遅れたから」


「いいです! 悪いと思ってるんならもう付いて来ない……」


「真樹ー、なに? 遅れてきた上に男連れ?」


ハッ!


友達の京子が門口に気づいてしまった。



「ちがっ、この人、ただの……」


「光建設の門口です、はじめまして」



″ただの取引先の社長″


と言おうとしたら、誰も聞いてないのに会社まで名乗っていた。



「え?こんなにお若いのに社長さん?!」


名刺まで差し出して……。



「……あ、えーと、何かお仕事の話が?私、お邪魔ならおいとましますけど?」



京子、完全に引いちゃってる。



「いえ、いつもお世話になってるリース会社の経理の方がドレスを買われると言うので、素敵なお店を紹介して差し上げようと思いまして」



「えっ」



私、経理じゃないし。

そんでもってドレス買うなんて言ってないし。




「もし、良かったらこのままお連れしますが?」




いつもの俺様ぶりを隠して、京子には紳士の仮面を見せてる。



いったい何企んでるの?




面食いの京子が頬を染めて、目を輝かせている。



断るわけないよね。





「え、ええ! 喜んでお願いしますっ」



ほらね。



「てことで、ほら、森山行くぞっ」



「……ぅ」



素敵なお店なんて行きたくない。


だって、私、ゲームキャラのTシャツだよ?

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