第29話

「もしもし?」


電話をとってすぐに、ガチャ!と一方的に切られてしまった。


ツーツー……。



……なに? 間違い電話?



それなら、一言いえっつーの。


不快な気持ちでスマホを再びテーブルに置いていると、また同じ番号から着信。



一体なんなの?



「もしもし? 何か?!」



お父さんに話しかける位のつもりで声を張って電話を取ると、



「あー……俺だ。光建設の門口。お前って電話取る声、デカイな」



低い声が私の眠たい眼を完全に覚まさせた。



「か、門口さんっ?? どうしたんですか?」



一体何の用? 休み中でもリース追加とか?




「あー、一回目、飲み屋の女と間違ってかけた」


「はぁ……」



無言で切ったもんね。この人……。


「で、二回目も間違ったんですか?」


「そうじゃなくて」


「…?」


「お前、趣味、日曜大工?」


「はい?!」


なんでそうなるの?



「一回目かけたときに、何か作る音が聞こえたからさ」



「……あー……」


門口が言っているのは、うちのお父さんの金槌の音だろう。




「あれは父が何かやってるんだと思いますけど。何かオーダーメイドとかのお話ですか?」

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