第30話

そんなわけないのに、一応聞いてみた。


「そんなわけないだろ」


やっぱりね。



「……じゃ、なんですか? デートの誘いですか?」



そんなわけないのに、懲りずに聞いてみた。




「まぁ、顔見たくてな」



え?


否定しなかったよ?



「か、顔ですか?」



こんなフツーの28歳の女子の顔を休みの日に見たい?


それって、



「そう、一目惚れしたからな」


「えー?! 」



もしや、恋!?


動転してスマホを落としそうになった。




「ひげ面の豆子にな」


「…!…」





……なに、このベタなオチ。




「俺も出掛ける前にジャンヌの散歩に出るから、お前も豆子連れてこいよ」


「……はぁ」




豆子じゃない、ペコだって。




何が嬉しくて仕事関係の人間に、連休初日の朝から会わなきゃいけないんだろ?



それでも断れなかったのは、門口のキャラと、見るだけなら大満足な外見のせいだと思った。

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