第26話

「別にそういうわけじゃないよ」


冷たい横顔が少し微笑んで、運転する私の方を見た。


……うそ。


この人、笑うと可愛い。


なんだろうな、整った外国の優しい犬みたいな。


そう、コリーみたいだ。



「俺は賢い番犬が欲しくてロットワイラーを探してたんだ。でもあれを扱えるショップも少なくて、なかなか見つからなかった。

たまたま愛犬団体のTwitterを見て、ジャンヌの存在を知ったんだ」



一度、そう思うと、門口のひとつ一つの表情や仕草がコリーに見えてくるから不思議。



″お手″

って、言ったらやってくれないかな?



「ロットワイラーは噛む力が凄くてちゃんとし躾ないとあとあと飼育が大変な犬種……って、なにさっきから笑ってるんだよ?」



ハッ。


しまった。


つい、口元緩んじゃった。




「お前、年齢にそった躾してやろうか?」


「結構です」


この人がうちの上司じゃなくて良かった。





「あっ」

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