第25話

「豆、元気か」


「はいっ? あ、ぁぁ、豆柴ですね。元気ですよ」


運転だけで精一杯の私に、気を遣ってるのかもしれないけれど、要らない会話を始める門口。


てか、略さないで。




「あれまだ若いだろ? 動きが若々しかったもんな」



性悪でも犬は好きなのか、ちゃんとペコのこと見てたようで……。




「3才です。門口さんのところは?」



ロットワイラー。

成犬は厳ついけど、子犬の時は超可愛い犬。



「恐らく同じくらい。獣医が言うにはな」


「恐らくってなんなんですか?」


それ把握出来ないくらい多忙なの?



「あれ、貰ったんだよ」


「え? お金持ちのお友だちから?」


「違う。保健所で」


「保健所……? また、何いい人ぶってるんですか?」



調子に乗った突っ込みをした私を睨みつけて、門口は少し切ない目をし、そして外に視線を移していた。




「前の飼い主はちゃんと躾ができなくて、成犬になったジャンヌに手を焼いたんだろうな。捨てられて栄養失調で病気になったところを保護されてたんだ」



「……」



批判出来ない日本のペット事情。


ペコは、わりかし高値でお父さんがブリーダーから買ってきたんだ。




「か、門口さんはショップ販売を反対する愛犬家なんですか?」



金持ちは、保健所の犬なんて見向きもしないと思ってた。

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