第23話

「で、江島はなんで来ない? お前営業じゃないだろ?」


門口が眉間にシワを寄せて私を見る。

私はたかだか一般事務員。

こうやってマイナス伝票を切る位しかできない。


「あ、はい、江島は本日、休みを頂いてまして……」


「それは聞いた。病欠か?、電話はしたのか?」


「風邪だと言ってました、一応かけましたが取らないので、寝込んでるのかと……」



「あんな図太い身体して風邪くらいで寝込むのか」


それ、偏見。



「風邪は万人共通ですから」



そもそも今回のトラブルの要因は、江島さんが工事の工程を把握出来てなくて、必要な機械の点検整備の時間を十分に確保できなかったことだ。



整備の宮崎さんは一生懸命やっている。



「ご迷惑おかけしました!ユニックは部品を変えたら動くようになりました!」



今の工程で一番使うクレーン車もあと一時間もすれば修理完了らしい。



残りはダンプ。


ダンピングがならないただのトラックと化した乗り物。




「お前、なんつったっけ?」


「え? 私、森山です」


「そうだ、森山だ、お前、このダンプもう使わないから持って帰れよ」


「えっ?!」


門口がダンプを小物のように言う。



「普通免許持ってるんなら乗って帰れるだろ?2㌧ダンプくらいなら俺の会社にだってある」



えー、私に乗って帰れって言ってるの?!



「免許持たないリース会社の社員なんていねーだろ?」


「……ぅ」


そりゃ、普通免許は就職の必須条件だったから持ってるけど、ほとんど使うことはない。



「持ってるけど、ぺーパーなんです……」



「いいから早く退かせ、役に立たないダンプなんて邪魔なんだよ」




この性悪社長。


プラスせっかち野郎だ。




仕方ないので、ドキドキしながらダンプに乗り込む。


せめてオートマならなぁ……。


宮崎さんも整備をしながら心配そうにこちらを見ていた。






「あ、そうだ」

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