第21話

4月下旬。

世間はゴールデンウィーク間近で、TVや雑誌を見ても浮き足たった情報ばかりが目につく。



サービス業とはいえ、建設会社が休みのところが多くうちのリース会社も合わせて休みになる。


「森山さん、GWどこか行くんですかぁ?」



新入社員の大島さんがニコニコと聞いてくる。



「別に予定はないよ。来月の結婚式の服を友達と買いに行くくらいかなぁ」



「お友だちの結婚式なんですか?」


「んー、そう、同級生」


「森山さんも早く相手が見つかるといいですねぇ」



そう、大島が天使の笑顔で言い放たって、周りにいた営業マンや後輩事務員達が固まっていた。



この子だけ、私の失恋を知らないから仕方ないのだけど。


ひきつりながらも笑顔で応えてみる。




「……そうだね、二次会で誰か私のことを見初めてくれるの待ってるよ」




ブーーーっ!!


と、前の席で珈琲を飲んでいた荻田が吹いた。



こいつの方が失礼。



そんな和やかな(?) 空気の中、


プルルルルルーー!



外線の電話がかかってくる。


ワンコールでそれを取るのも、やっぱりお局の仕事。




「お電話ありがとうございます。アクセスリースの森山でござ……」


「おいっっ!!江島は?!!江島だせっ!」


取って言い切る前に電話口から怒鳴られた。




「……あ、申し訳ございません、江島は本日お休みを頂いております、私で良かったらご用件をお聞きしますが……」




凄い怖い声。誰?お客様?

建設関係の人は怖い人が多いのも事実。




「光建設の谷口じゃっ! お前んとこのレンタル機械はどうなっとるんじゃ?!」




やはり、最近、江島が担当になった光建設の現場からのクレームだった。






「ちゃんと確認してから貸し出せや」

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