第20話

「……え?」


結婚が難しく、別れてしまった元カレ。


私がそう思っただけで、お父さんは反対したわけではなかった。



「会わないよ、てか、同じ会社だから毎日顔を合わすしね」



動揺したせいか、いつもみたいに声を張るのを忘れてしまった。



「はっ?!なんだってっ?」


案の定、お父さんには聞こえはしない。

顔を寄せてくるお父さんを押しやり、


「何でもないッ!!」




泣きそうな顔を見られないように、慌ててキッチンへ向かった。



素通りした仏壇の写真のお母さんが笑っている。



……お母さんさえ生きてくれていたらな……。





そう思ってしまう自分が嫌でしょうがない。


うまくいかない交際を亡き人のせいにするなんて、ダメな人間だよ、私。



「……ゥン、クゥン……」



足元にすり寄ってくるペコに茹でた野菜をあげながら、

お母さんが得意だった煮物を作る。



結構、美味しく出来るのに。



……食べてくれるのは一生、お父さんだけかもしれない。

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