第11話

午後から来客。

なら、その前に5年前の伝票類を倉庫に持っていって更に7年前のをシュレッターにかけよう。

それから、一回の荷受けに郵便小包を置いてって、お昼ご飯を買いに行って……。



考えながら、台車に箱を積んで移動していたら、廊下で営業の山口さんとスレ違った。



「おう、お疲れ」



ーー元カレの、″克己″だ。



「……お疲れさまです」




別れて10日。

失恋の痛みはまだ残ってはいても、同僚となるとシカトもできない。




「それ、倉庫に持っていく分?」


「……ぇぇ、そうです」


「手伝ってやろうか?」



うちの営業所の中で、唯一こういうのを手伝ってくれた男性社員。


別れる前なら自然に甘えられた。




「大丈夫です……ありがとうございます」




だけど、今は甘やかさないで。


変に期待してしまうから。




「あ……そ、気をつけてな。倉庫の事故って案外誰も気付かねーから」



「わかってます」




また、元サヤもあり得るんじゃないかと……。

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