第4話

仕事のストレス。

失恋のストレス。



それだけでもイライラ頂点なのに。



「ただいまー! おとうさーん、もうペコのお散歩いったー?」



……。


「お父さん! お、さ、ん、ぽ!!」




さらに自宅に戻っても家族にも苛立ちを覚えたりする。



「あ、あぁ、真樹、帰ってたのか。今、なんて

言ったんだ?」



自営業で大工をしてるうちのお父さんは、片方の耳が聴こえないので、些細な会話でも声を張らなきゃいけない。




「もういい、散歩行ってくる」



疲れてるのに大きな声なんか出したくない。

余計にストレスがたまる。



寝転がってテレビを観るお父さんの足元から、

飼い犬のペコが飛び出してきた。



「ッン!!…ワン!」



「ただいまー♪ ペコー♪ お前だけが私の癒しだよー」



柴犬のメス、3才。


鼻の頭が黒くて良く雑種と間違われるけど、血統書付きの豆柴だ。



三年前、お母さんが他界してから飼い始めた、大事な家族。

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