第32話

こいつは泣き疲れて眠った。

こいつが葉子(はこ)だったなんてな。調べてもらうまでわからなかった。俺の親は身体が弱くて、俺は母方の姉さんに預けられて、当時としては珍しい黄色のランドセルを背負ってた。夏間、おばちゃんの家の近くは別荘があるらしくてそこで9歳の時5歳も離れた小さな女の子に恋をしてしまったらしい。こいつはある日迷い込んできた。木の葉っぱみたいに振ってきたのだ。俺はびっくりして受け止めた。一瞬天使かと思うぐらい、こいつはきれいでお姫様抱っこをした俺にビビることもなく、可愛らしい瞳を向けてきた。するとこの子に俺はハコと名付けてしまったら、きーちゃんだねというから俺はなんでだと思ったら、俺そういえばこれ背負ってたんだと思った。

キーちゃんって今学校もないのにランドセル背負ってるけどなんでと聞かれた時、お父さんとお母さんが買ってくれたランドセル。これ俺の宝物だしというと、俺の父さんと母さんは入院してるんだ。というと、早く元気になるといいねといい、俺の手におまじないだといい、キスをしてきた。俺がこれが葉子との出会いだったのだ。

俺は葉子にこう言った。もうお前が恐怖を感じることのないように俺が守ってやる。今までつらかったねといい、お休みというとこいつの唇に触れるだけのキスをしたのだった。

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