第10話

ゴマと留守番中に「なあ。ゴマ、俺な。葉子ちゃんは同じような感じがするのはなんでだろう。」といい話していた。あの日の事を思い出した俺。ゴマが俺の顔を心配そうに覗いていた。大丈夫というと俺の膝の上でゴロゴロ言っていた。あの日、いつも通りに帰ってくると、俺の嫁、康子(やすこ)がひどい姿で息絶えていた。あいつは死ぬ間際まで助けを呼んでいたのは確かだ。

俺はあの男がしたことは、許すことが出来なかった。でもあいつと約束した。もしあなたが復讐で殺そうと思うなら私と別れてほしいといわれたから、俺は、警察に証拠になるものをすべて渡した。あいつの携帯のあれも。するともう一つ警察がデータを見つけて、「奥さんがあなた宛てにということみたいですよ。」というと録画していたものを聞くことになった。日付は殺される前の日だった。

「あなた、ありがとう。私はいつか殺されるかもしれない。その日が来たら、私との約束を守ってほしいの。恨みで人を殺してはいけない。警察にいって堂々としててほしいの。それと、もし犯人が捕まったら、すべて警察に任せてほしい。それと最後に私の事を知っても、変わらずのあなたでいてくれてありがとう。私はあなたといて幸せだった。さいごに愛してるわ。」その言葉を聞いても俺はなにも感じなかった。俺は、その時にはもう心の中がおかしかったのかもしれない。俺はそれから一か月間、仕事も頑張っていたし、いつも通り頑張っていた。でもある日、俺は急に仕事の集中も途切れ、朝なんか会社で責められてるわけでもないのに行きたくないような感じになっていた。会社の社長が産業医に連絡をいれて、産業医に見てもらったところ、「うつ病かもしれませんね。医師を紹介するので行ってください」と言われたところが奥さんの弟の経営してるところだった。でも俺は病気じゃないと思い行かなかった。でもある日病気であることに気が付いた。それはあることがきっかけ。俺は朝起きると気分がすぐれず、起き上がれなかった。その日弟に電話をしたらすぐ弟がかけつけてくれた。その時、「兄さん、頑張りすぎだよ。夜もろくに眠ってないみたいだね」まったくそのとおりだったのだ。そして決定的なことは涙が止まらないというか、マグカップでコーヒーを飲んでた時に、失敗をしてしまって、それが悲しくてしょうがないということだった。そんな俺を弟が気が付いてくれて、「大丈夫じゃないでしょう。兄さん。病院に行きましょう」というと、この時初めて弟に産業医の意見書を見せた。

そしたら弟はびっくりしていた。「なんで隠してたの。兄貴」と聞かれたが「だってこんなに大変になるなんて思わなかった」という俺に対して、「とにかく少し入院しよう」と言われた俺は、それを素直に受けた。会社にも大地が連絡を入れてくれた。そして手続きもすべて弟がしてくれた。康子、ごめんな。お前を守れなくて。でも、弟は俺のことを悪く言わないんだな。本当に。と思うと、「康子、君の弟大地君は、本当にいい奴だ」つぶやいた。そして俺はゴマの寝てるのを静かに見ていた。

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