第5話

次の患者を入れていいですかと聞く。それは琴原真(ことはら まこと)という僕の義理の兄さんだった。

毎回俺の話を聞くためにすまねえというと、これが仕事だし大丈夫だって。というと、最近眠ってると聞くと、あの悪夢は出てくるがあれは私を忘れないでって言ってるのかもしれないなというと、なあお前はどうして精神科医になろうとしたんだというので、僕がなろうとしたきっかけは昔、僕の家族が危篤のときに寄り添ってくれた医師がかっこよかったんだ。両親が亡くなった後、親身になって俺の話を聞いてくれたし、僕はこの人みたいに人の話を聞いて寄り添いたいと思ったよ。「うつって世間では怠けてるとか言われるけど、俺なりに一生懸命やってるんだぞ」という兄貴。「いやー兄貴、それは世間がもっと病気の事を理解しないといけないんだよ。兄貴はお姉さんの事があって頑張りすぎてしまったんだよ。誰にも言わずに、仕事とかも残業多かったしね。姉さんの事故現場を一人で見てショックだったろうにね。そういう悲しみに浸る時間がなかったのが原因なんだと思うよ。いろんな要因が重なったんだと思うんだよね。どう入院する。それとも会社をしばらく休む」と聞く俺に、「大丈夫。今日は俺。お前に会う日だったから、少し話してたら少しずつ頑張ってみようと思ったし。という。薬なんだけど今回は少し減らしてみようか」というと、減るってことはいい兆候なのって言われたので、まあそうだね。というと、兄貴はとっても嬉しそうだったのだ。

「じゃあな」と言うと「次の診察日を忘れないようにね。それと具合が悪くなったらすぐ俺の家なり病院なり来てもらっていいから。電話でもいいから」というと、兄貴は帰って行った。

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