第3話
看護師が僕にこう言った。「彼女、痣も何もありませんよ」というのだ。「でも彼女は自殺をしようとしてたんだよね。なんでだろう」と思ったけど、「先生、彼女身元になるものを持ってなくて、どこの誰なのかわからないんですよ。」「彼女の葉子という名前ということしかわからないか。言おうとしないんだもんね。彼女」というと、「でも相当心が疲れてますね」というと、「そうだね」という。俺はなぜかあの少女を見た時、姉の事を思い出した。
俺の姉、康子が逝って5年になる。姉は当時、同棲していた彼がいた。その時、元彼は、しつこく姉と復縁を迫っていた。
復縁を迫っていた元彼は、姉に暴力を振るって別れている。
ある日、姉の彼氏あてに一封の封筒が届いていた。開けると同時に驚愕した。それは姉の全裸の写真だったのだ。でも彼は姉とは別れることはなかった。姉を守ろうとして姉に警察に行こうと説得した。
被害届が受理されたある日の事、引っ越そうとした矢先に起こった出来事だった。元彼が姉の家に宅配業者として装い、家に入ってきた。その時は姉だけだったので、気づいた時は遅かった。姉はその元彼にレイプをされて殺されたのだった。彼が帰ってきたときにはもう、犯人もいなかった。彼はあるものを見つけた。それは携帯だった。録音された声を再生した彼。やめてという姉貴の必死な声だった。それが犯行の一部始終であることは明らかだった。急いで警察に向かった。そしてこの姉が残したものが犯人逮捕のきっかけを作った。
彼は今姉さんを失ったショックでうつ病になってる。本当に姉を愛していた人は彼だし、俺も彼を治療し、今は少しずつだが頑張ってもいる。でも姉を失ったショックを計り知れなかったと思う。だから弟である俺をここまで大切に今もしてくれてるし、俺も兄貴だと呼んでるのだ。葉子、君は何があって苦しんでるんだ。自殺したい理由を聞けないのは仕方ないが、でも君のようなきれいな子をみて助けないわけにもいかない。
彼女は月のように美しい、そんな人物だった。
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