第55話

美咲ちゃん、来たよって言ってくれた多紀さん。多紀さん。親の事でごめんなさいと言ったら、なんで謝るの。僕こそかける言葉がなくてゴメンねと言った。ねえ、定時制の高校に行くこと考えてくれたと言われて、そうこれは以前から言われていたことだ。一応高卒までは持っておいたほうがいいって。僕は一応その高卒だからね。というと多紀さん。私、定時制に行きますというと、にこりと笑った。すると美咲ちゃん、美空ちゃんとやっぱり姉妹だね。笑ったらそっくりと言った多紀さん。今日はちょっと辛い事を聞くかもしれないけど、辛かったら言ってねというと、多紀さんは殴られて痛かったんだと思う。だけど何がそうさせたのと聞かれた。私はお姉ちゃんが殴られるのだけは嫌だった。お姉ちゃんは障がいを持って生まれて来たことに間違いないし、殴られたら致命的になりそうだったから。でもお姉ちゃんはいつも殴られる前にお金を持ってきて、あの人に美咲を殴らないでって頼んでた。その時は殴られなかったよ。それとやっぱりお姉ちゃんは私にとってはお姉ちゃんだよ。守ってくれたしというと、多紀さんは悲しい顔をした。そしてこういった。美咲ちゃん。君は本当に優しいね。生まれたときから君はお姉ちゃんを守るために生まれて来たんだね。というと多紀さんは私をギュっと抱きしめた。美咲ちゃん。これからは幸せになってほしい。それがタヌキの恩返しだと思ってと言われたので、はいと言った。そしてまた来るからという多紀さん。そんな多紀さんは私にとってはお父さんみたいな人。だから親しみをこめてタヌキ父さんと呼ぶことにした。

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