第305話

「婚約は破断になり、抗争が勃発いたしました。」



「ほう。」



「怪我人数名、ほぼ無傷で事は終えそうでございますが…………矢田橘、先ほど息を引き取りました。」



「……そうか。下がれ。」



「御意。」




おじいちゃんは疾風兄を下がらせた後に、ゆっくりと橘君の方に近づいてくる。



私がしゃがみ込んでいた逆の方におじいちゃんもしゃがみ込む。



橘君の幸せそうな顔を見て、ポツリと呟く。





「綺麗な顔で死んどるやないか。さぞかし、ええ死に方をしたんやろうな。」



言い方としてどうかと思うけど、かつてなく悲しそうなおじいちゃんを見て、私は何も言えなかった。



ただ、橘君をジッと見つめることしか、できない。

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