第82話

よし、後は出るだけ……と思った矢先だった。



「皇紀。」



疾風が俺を呼ぶ声が、聞こえる。



ぴたりと俺の足は止まる。



朱希は微動だにしていないが、下を向いて視線だけはキョロキョロと動かしているのが見えた。



その後ろには朱希を見下ろしている疾風。




……緊張が走る。





「……いや、俺の気の所為だな。いい、行け。」



何を思って、朱希を見ていたのかこれで分からなくなったが、多分……。




いや、聞かれなかったんだからこの話はやめよう。





「片岡。車、回して来い。」



「へい。」



ガラリと音を出して、玄関のドアが開く。



俺はもう一度だけ、家の中をグルリと見渡して、疾風に笑いかける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る