第10話

母さんから手を放した佐伯さんは、僕にゆっくりと近づいてくる。



母さんはそれを見て、必死に佐伯さんにしがみつく。



「皇紀!やめて!朱希に近づかないで!」



しかし、母さんのその抵抗は佐伯さんには鬱陶しいものでしかなかったみたいだ。



近くにいた黒いスーツを着た男の人に手で合図をし、母さんを無理矢理引き剥がす。



「皇紀!」



必死にそう呼んでいる母さんの姿を見て、僕は立ち竦んでいることしか出来なかった。



そんな僕と母さんを見て、あの時のような不敵な笑みを浮かべている彼はどうにも僕とは感覚が違うように思えた。



僕が普通なら、彼はアレだ。



──……歪んでる。



この言葉が、彼にとって一番合っていると思ってしまった。

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