第9話

はじけ飛ぶように僕はドアノブに手をかけて、リビングのドアを開ける。



そこにあった光景とは、父さんは床に這いつくばっていて、母さんが佐伯さんに顔を片手でつかまれている構図だ。




目を見開いて、僕はそれを見てしまったのだ。



「朱希!」



母さんがそう僕の名前を呼んだのが遠くで聞こえたけど、僕には今それを聞く暇なんてなかった。



最も恐れていた光景を見てしまったからだ。



怖くて、今一番見たくない、光景。






「やあ、先日振りだね。松下 朱希君。」



その声も、その不敵な笑みも、もう感じたくも見たくもないと思っていたものだ。



それでも彼は、期待に応えたよという顔で僕を見つめる。

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