第86話

「お、み…」



久々に呼んだ、彼の名前。



その声に、その私の表情に少しだけ顔をゆがめる。



どうして私を見てそんな悲しそうな瞳をするのかは分からないけど、彼の表情はかつてなく、苦しそうだった。




ドアを開けたまま、彼は私に近づいてくる。



震えていた手は止まって、私はずっと彼を見つめていた。



いや、怖いのだけど……何っていうんだろう?



切なすぎて、苦しすぎて…恐怖を忘れてしまいそうだ。





そう、か。



私は彼に同情しすぎてしまっているのかもしれない。



もっとはっきりと彼に、ちゃんと伝えてあげればこんなことにはならなかったのかもしれない。



泣きそうになるのを、必死に抑える。

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