第104話
「話は終わったようですね。たしか錦くん?一度しか会ったことないから覚えてないよね。」
「す、すみません……。」
『この人は僕の指導役の獅子さん。獅子さん、タイミングいいね。話し終わるの待っててくれたの?』
「話は聞いていませんよ。双子に若が戻られたのがバレたので、手綱を引きに来ただけです。」
「ほ、ほんまに若頭なんやな……。」
錦の言葉に頭を押さえていた双子が顔を見合わせてから、私と錦を見る。
「紺、言えたんだ。何がどうなったんだよ!」
「そうだ!俺たち置いて何処行ってたんだ!獅子さんにどつき回されたんだぞっ!!……ヒィッ」
「若の護衛の任を疎かにしたお前たちを指導してやったんだろ?若に何かあってからでは遅いんだ。」
「「す、すみませんでした。」」
『す、すみません……。』
双子に習って私を獅子さんに頭を下げた。
そうだ、私に何かあったとしたら私だけじゃなくて双子も怒られるんだ。
考えが甘かった。
「若は頭を上げてください。俺は怒ってませんよ。クラッカーを顔面で鳴らしたことなんてね。」
『ううっ……さーせんした!!』
怒ってた。
めっちゃ怒ってる。
頭が上がらなくて床に這いつくばった。
「クラッカー禁止です。そもそも武器となる物は没収したのに……部屋を検査します。この前は何やらおもちゃのハンマーで男たちを倒していったとか……ハンマーも没収します。」
『うわぁぁぁぁっ!!!誰だチクった奴!!』
「っ」
『だーいーきーちーくーん??』
「ずみまぜんでじだぁ……晃さんと話してたら、獅子さんが背後にいて……うぅっ。」
三人して土下座して獅子さんに頭を下げながら言い合っていると、また獅子さんに怒られた。
「若、今日は何をしに繁華街へ?」
『あ、アルバイトの面接に……』
「「「バイト!?」」」
錦と双子が声をすっとんきょうな声を上げたから、驚いて私も顔を上げた。
「おこづかいはご両親が毎月出しているんですよね?」
『バイトは社会勉強で、まあ自分で働いたお金で買い物はしたいし……達成感あるよね。全て食費に消えるのですが。』
父からは毎月十分すぎる程お金を貰っているが使う予定はなく貯まり続けている。
母からは洋服や靴や鞄を買ってきては私を着せ替え人形にするから、自分で服を買ったのは今日が初めてだった。
『父の昔からの知り合いのお店だから大丈夫!もうお店の場所も店名も知ってますよね。和志を護衛につけてたんですから。』
「ええ。アルバイトの件、頭に報告させていただきました。頭には言っていたのですね。そこは安心しました。」
『あー……あの人会えないからシオちゃんに言ったんだよね。シオちゃんはあの人に言うと思って。』
母からも祖父には言ったと言われたが、やはり本人に直接言うべきだった。
同じ家に住んでるから連絡先なんて知らないし、忙しくて家にいない祖父に直接が難しいのはこの数日で痛感した。
これはただの言い訳だが。
「若、このことは置いておいて。尾行は撒けたのですか?」
『はい。相手は男一人だったので。』
化粧品エリアは女性客がほとんどで、いたとしてと女性を連れている男。
そんな中で厳つめの男が一人なんて目立った。
顔と気配さえ分かってしまえば、近くにいるかいないか気を張っていれば分かる。
『ねえ、麟太郎か壱の連絡先知らない?』
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