第101話

……んー。困ったな。



完全にこれどっからか見られてません?

一つは多分柳の人間だ。

獅子さんが何もしないわけがない。

カフェに来る前から感じる気配は身内だ。

隠れて見守ってくれているのだろうが、問題はもうひとつのわざとらしい視線。



カフェに来るまでは一つしかなかったものが、繁華街を数分歩いている内に増えた。

つまり、柳の若頭ではなく八雲紺を監視しているということか。



帰るに帰れないこの状況。



視線だけで周りを探ったが、日曜の昼下がり。

人が多くて何処にいるのか分からない。



溜め息を着き、仕方なく獅子さんに連絡をいれた。

【20分後、センターモールの地下駐車場に柳とバレない車で来て下さい】と。



お店を見て回る振りをしながら視線だけで周りを探る。

モールに近付き、人でごった返している化粧品エリアを通り、食品フロアを通って閉まりかけたエレベーターに飛び乗って男女の服が両方売っている有名チェーンのフロアで降りた。



男物の服と一緒に女物の服と鞄と靴も買った。

男が女物だけ買うのは不自然だからね。



一度目のトイレで上の洋服を変えた。

フロアを移動して、ウィッグを買って着けさせてもらったまま店を出た。

店員さんがゴリ押しだった赤茶色のロングヘアーにした。

声を少し高くして、髪を耳にかけて一人称を帰るだけでボーイッシュな女の子に見られてしまうのだから、私の男装は結構危ないのかもしれない。



二回目のトイレは当然女子トイレに入り、スカートと靴を変えた。

着ていたものたちと男物の服は買った鞄に入れて、買い物袋はゴミ箱に捨てた。



何処からどう見ても女に見える。



エレベーターで尾行は撒けていたが、仲間が隠れているかもしれなかったから念のために変装した。



『っ!!』



「錦、俺そろそろユウジたちと約束の時間だ。買い物付き合ってくれてありがとな。」



「うん、楽しかったで。桃里は喧嘩せんと気ぃ付けて行きや。」



やっば……やばばばっ!!

バレたらジ・エンドだ。

私の前から私服姿の錦と桃里が歩いて来て、咄嗟に物陰に隠れた。



「じゃあなー!」



モールの入り口で二人は分かれ、去っていく。

ホッと胸を撫で下ろして地下へのエレベーターに歩みを進めた。



「壱、結局両方買ったね。」



「選べなくてなー。」



「麟太郎喜んでくれるよ。」



『っ!?』



次は後ろから壱とユウジの声がする!

なんでこうも忙しい時に限って次から次へと!



「なぁ、あの子可愛くね?」



「後ろ姿だけじゃなぁ……脚綺麗だね。」



「声かけるか。」



「壱って硬派な顔してるのに声かける時だけは軽いよねー。」



二人が誰かに気をとられてる隙に、人の並みに流されながら急いだ。

あと少し────



「そこのお姉さん、ちょっといい?」



『へ……』



肩を軽く叩かれたが、振り向けない。

だって、声がバレないように逃げてた相手のものだったからだ。



……あ、終わった。



顔を見られたらバレる。

変装していてもバレるに決まってる。



ああ、明日には女装趣味の男だと吹聴されるのだろう。



「大丈夫?」



俯いて振り向かない私に壱はもう一度声をかける。

真夏に冷や汗びっしりです!



『……な、なんでしょうか……』



「連絡先教えてよ。」



『……あの、いや……ごめんなさっ』



振り向かず、俯き気味に女の子の高くか細い声で答える。

ちょっと不気味かも?



「壱がいきなり声かけるからビビってんじゃん。ごめんね?」



「あ、壱沙くんとユウジくんやん?どないしたん?」



「おお!錦!」



な、何故!?!?

錦はさっき出ていったじゃん!

なんで帰ってきてんだよ!!

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