第100話
父はやはり完璧だ。
仕事が速い。
日曜日の正午。
今日は大吉と諭吉に内緒で家を飛び出してきた。
飛び出したところを獅子さんに見つかり、クラッカーを食らわして逃げてきた。
『こんにちは、八雲紺です。』
「俺は店主の
『それは他言無用でお願いします。正真正銘、ですよ。』
「うちでも男として働いてもらう。担当はキッチン。いいか。」
『よろしくお願いします!』
色さんはニコリともせず、淡々と業務連絡と店の説明をしてくれた。
キッチンは色さんと私。
ちなみにホールには色さんの奥さんと、24歳女たらし、私と同い年の少年が決まっているらしい。
「バイト経験。」
『バイクショップとレストランのキッチンっすね。』
「……愛想ないな。笑えないのか。いらんとこクロに似たな。」
『色さんも表情筋死んじゃってますよ。人のこと言えないっすね。』
喋っていて、瞬きか口しか動いてない。
私もはたからこうなのかな……マネキンが二人向き合ってるカオス。
父と同い年ということは、この人も中年なのだろうが見た目年齢詐欺の顔だけ優男イケメンだった。
こりゃ立ってるだけで客来るわ。
「一品作れ。」
そう言って、卵を目の前に置いた。
キッチンの中の物は好きにして良いから卵料理を作れと。
昨日錦が作ったオムライスは美味しかったな。
卵に包まれてるのも好きだけど、とろとろも好きなんだよね。
材料もあるからとろとろのオムライスにした。
デミグラスソースの素があったからそれを最後にかけたて色さんの前に出した。
『どうぞ。』
色さんは一口食べると頷いて全て残さず食べた。
「旨い。合格だ。これも出す。」
『感想遅い……。』
「腹減ってた。」
『……て、天然っすか。ちょっと可愛いです。』
思ったことが口から飛び出して、素直に答えた色さんは最初の印象よりも柔らかい感じがした。
8月下旬から開店。
その前日が初出勤の日に決まった。
「他の奴らとはそこで会える。」
『はい!!』
お店の感じも、色さんとも気が合いそうで良かった。
店を出て、父さんにはお礼と報告の連絡をした。
折角一人なんだもん。
ちょっとくらい寛いでもバチは当たらないだろう。
こういう自由も今だけなんだよなぁ。
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