第96話

「紺ちゃん手際ええなぁ。」



『父の趣味が料理だから教えてもらったりするんだ。』



「紺ちゃんのお父さんってどんな人なん?」



「俺らも聞いたことなかったよな。」



「聞きたい!」



そうだったっけ?

組でも父や母の話も出てこないし、二人とは両親の話などしなかった。

多分、私に聞いたらお母さんのことを私に聞かれるからだろうな。



『どんなって……んー、何させても完璧にこなす。最強に強くて優しく正義感のある僕の憧れの人だよ。』



「ふふっ紺ちゃん嬉しそうな顔してる。紺ちゃんみたいな人なんやな。」



嬉しそうな顔?

ペタペタと自分の顔に触れてみたが、相も変わらず死滅した表情筋はピクリともしない。

そんな私を見て、錦は愉快そうに微笑みを浮かべている。



「確かに!紺ってなんでも出来るもんなー。」



「紺ってチート級に強いけど、紺の父ちゃんもチート級?」



『まだまだ追い付かないけど、父みたいになりたいからな。父は僕より遥かに強い。勝てたことない。父はそれでも手加減してるんだろうけど。』



「「……うわー。最強だ。」」



「会ってみたいな。」



『父と母も三人に会いたいって言ってた。父が肉を奢ってくれるってさ。』



やはり男の子。

肉という言葉に目を輝かせた。

これは恐いもの(父)見たさもあるのだろう。



「楽しみや。紺ちゃんのルーツに会えるんやな。」



『錦の両親はどんな人なの?』



錦は少し考える素振りをしてから、柔らかい笑みを浮かべた。



「父さんのことはよく分からんのや。優しい人やけど、怖いところもあってな。母さんはのんびり屋で優しい人やった。よく笑う美人さんやったで。」



『そうか。』



大吉と諭吉は静かに錦の話を聞いていた。

過去形なのは、そういうことなんだろう。



「紺ちゃんに会わせたかったなぁ。」



『あの木箱、もしかして仏壇?』



「そや。」



私たちが来るから扉を閉めたんだろうな。

棚の上に小さな木箱があって、両開きの扉を開けると錦に似たとても綺麗な女性と、小さな錦が仲睦まじく写っている写真があった。



三人で手を合わせていると、完成したオムライスを錦が運んできた。



「ありがとう。喜んでると思う。」



『綺麗な人だな。錦は母親似か。』



「そやなぁ。僕のお父さん厳ついで。」



「「ダンディーで悪人顔の渋い顔してる。」」



九条組の組長で祖父の親友。

いずれは会うことになる人だ。



『錦は兄弟いないの?』



「……おるで。さ、食べよ食べよー。」



錦はそれ以上教えてはくれなかった。

仲が良くないのかもしれないから深くは聞かなかった。



「「『いただきまーす!』」」



器用にケチャップでそれぞれの名前が書かれていた。

初めて錦と昼御飯を食べた日は驚かれたものだ。

大吉と諭吉もよく食べるが、それに負けないくらい私が大口開けてかっ食らっていたから。

「体の何処に入るん?即吸収するんか?」と真面目な顔で言われた。



そんなわけで私たち三人には大盛りで作ってくれた。



「「『うまーい!!』」」



「良かった。」



錦は嬉しそうにはにかみ、自分も小さめのオムライスを頬張った。

少食の女の子みたいな量しか食べないことに、初めて見たとき私も錦に驚いた。



『こりゃすぐに婿に行けるね。』



「錦は超優良物件だぜ!」



「錦なら良いお婿さんになれる!」



「あんがとさん。」



『彼女いないの?』



「いない。」



『好きな女の子くらいいんだろ?』



「……まあ。」



「「……。」」



錦が好きになる子か。

きっと優しくて小動物のような子なのだろう。勝手な妄想だけど。



……ん?もや?



「紺?どうした?」



スプーンが止まった私に大吉が不思議そうな顔をしながらオムライスを食べ続けている。

お茶を一口飲んで、もやっとしたものを飲み込んだ。

一気に詰め込み過ぎたか。



『詰まってた。』



「気を付けろよなー!」



『大吉は好きな子いるんでしょ?諭吉は?』



「いなーい。」



派手な赤髪でも無理だったのに、おしゃれ剃り込みが入ったことで更に無理になっている気がする。

顔は格好いいのに、それでは女の子も寄って来づらいだろうなぁ。

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