第95話

私と同じように首を傾げる諭吉。

錦が持っていないことを知っているのもそれはそれで面白いが、つまらなくなった私はソファーに再び座った。



『つまんない。だって諭吉は持ってるよな。』



「はっ!?!?な、なんで……」



『昨日、他の人が諭吉の部屋から持って出てきたから。』



「くそっ、誰かパクったな……!」



「諭吉くん……。」



「ふんっ!俺は健全なんだ。折角哲司さんからパクったのに、誰が持っていった!?」



他の人、犯人は和志かずしという二十歳の組員。

彼にそれは何かと聞くと、本来は晃の持ち物だったらしい。

それが晃から勝さん、勝さんから哲司、哲司から諭吉と流れに流れて今は和志の手にある。

物が物だけに大々的な犯人捜しはされないのだとか。



「諦めろ、諭吉。」



「……大吉も一緒に見たじゃん。」



「まあな。」



あ、大吉くんも健全な男の子でしたね。

そういえば、転校初日にクラスで皆見てたな。

今までもちょこちょこそういうものを見ている光景を見たことがある。

どの子がいいかとかで盛り上がっていた。



反応から察するに、錦は相当な純粋ボーイみたいだ。



「紺ちゃんも見たいん?探したってことは。」



『いや、中身に興味があるわけじゃない。肝心なのは錦がどういうのを持ってるか、ってところだよな。』



「紺ちゃん最低や!」



『ありがとう。』



「褒めてへん!!」



ひとしきり錦で遊べて満足した私は、錦が入れてくれたお茶を飲んで教科書を広げた。

広げたはいいが、全くやる気は起きない。

パラパラとめくり溜め息が出た。

だって全部記憶している。

しかし、自分がやらないからと言って、テスト対策をしている三人を邪魔してはいけない。



こんな時の為に本を持ってきて良かった。



「紺、勉強嫌いなのか?」



「何読んでんの?……英語だ……うわー」



『勉強は好きだよ。理解すると面白いからな。大吉、英語苦手なんだ?』



「紺ちゃんは得意なん?」



『僕先月までバリッバリに英語圏内で暮らしてたからな。』



「そうなんや!ほんなら紺ちゃんここ教えてー?」



『いいよ!ここはねー』



三人の勉強を手伝いながら、時刻はお昼ごはんの時間になった。



「お昼何食べたい?」



「「オムライス!」」



「紺ちゃんもオムライスでええの?」



『え、錦が作ってくれるの!?』



立ち上がった錦はおもむろにキッチンに行くとエプロンをした。

冷蔵庫を漁る錦の隣に行くと、私を見上げた錦がにっこりと笑う。



「一人暮らしやから、人並みにはできるで。オムライスは一番得意や。」



『食べたい!僕も手伝うよ。』



三人はいつも、錦が作る担当で大吉と諭吉は食材担当をしているらしい。

今日も二人は食材を持ってきていた。

最初からオムライスをリクエストするつもりだったんだな。



二人で調理しても狭くないキッチン。

一人でここまで広いと、私でも少し寂しいかもしれない。

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