第94話
ナチュラルに大吉の背中にしがみつき、おんぶされること数分。
私の腕の筋肉だけでぶら下がっているが、大吉は汗をかいて地面に寝転がった。
『っ!!あちちっ!!』
地面は焼けるように熱く、その熱さに私も大吉も飛び起きた。
「よ、妖怪かよ……」
『誰が子泣きじゃ!』
大吉の頭に優しいチョップをすると、優しくしたのに親の敵のように睨まれた。
「もうちょっと黙ってらんないの!?」
『お水~おみずみず~!』
「大吉、諦めなよ。紺は人間やめたんだから……。」
「そっか。」
『誰がゴリラだ。』
「分かってんじゃん。」
「自覚あるんだ。えらいえらい。りんご食うか?」
『食うっ!!ちょうだい!!』
「「……。」」
二人が白けた目を向けてくるのなんか気にしません。
おっきいおにぎり二つでは少し物足りなかったから、丸々一個りんごを手渡されて舞い上がった。
何故りんごを持っていたのだろう?
服でりんごを擦ってから噛りついた。
「もしも紺が暴走した時用のやつだったのに、まだ早いんじゃないの?」
「大丈夫。色々持たされてたから。」
りんごに夢中で噛りついていたから、誰に持たされた?とか暴走した時用とは?と聞くのはやめた。
鞄の中に入っていたコンビニの袋にりんごの芯は捨てて、錦の家のインターホンを押した。
錦の家は三階建ての真新しいマンションだった。
セキュリティがちゃんとしていて、オートロック、監視カメラもあった。
「おはようさん、入ってきてー。」
玄関のドアが開いて、階段を上がって三階の角部屋が錦の部屋らしい。
部屋の前に着くと、錦がドアを開けてくれて中に入れてもらった。
「暑かったやろ。来てくれてありがとうな。」
「「『お邪魔しまーす!涼しい~!!』」」
「緑茶でええ?適当にくつろいで!」
高校生が住むには広い。
錦の実家は関西の九条組。
柳組とは兄弟仲らしく、祖父と錦の祖父は親友らしい。
だから錦と双子は昔からよく親にくっついて遊びに行き来していたみたいだ。
グリーンとブラウンで揃えられた部屋は居心地が良くて、日当たりも良好。
双子は慣れた様子で三人掛のソファーに座り、私もそこに座った。
一人掛のソファーは錦専用なのだろう。
『もっと散らかってそうなのに、意外と綺麗にしてんだな。』
「酷いなぁ紺ちゃん。これは三人が来るから綺麗にしただけやけど、普段も散らかってはないで。」
錦のベッドの下を覗き込んだり、本棚を眺めて首を傾げる。
向こうで仲間内で流行っていたものを探す、が整頓されているのに何処にも見当たらない。
『諭吉、何処にあると思う?』
「なにが?」
『エロ本の隠し場所。』
「……。」
「紺ちゃんのえっち……。」
「錦はそういうの持ってないぞー!てかなんで俺に聞く??」
大吉は絶句していて、錦は驚きながらほんのりと頬を染めて恥ずかしそうにしている。
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