第92話
『そ、そうか……じゃあ匂いじゃないとなると、なに?』
「手と喉だって。半分勘らしいけどさ。」
自分で自分の手や喉を触ってみても、それで分かるのか分からない。
錦はなんて思ったんだろう。
でも一昨日も昨日も普通だったよなぁ……。
「紺は今、錦のこと気にしてるでしょ?当たり?」
『なんで分かるの?顔に出てるか!』
「いや、顔には出てない。いつもの無表情鉄仮面です。知りたいなら錦に聞いてみな。」
『んー……大吉が優しくない。錦には自分から言うつもりだったのになぁ。』
最後の一口のおにぎりを食べ終え、手を合わせた。
「これからの一番の難関は、自然教室だよなー。風呂をどうするか……。」
「『あっ!!!』」
夏休み直前にある第一の学校行事。
今年は山と川に行くらしい自然教室。
一年生から三年生が親睦を深めるための行事で、人数が全体的に多くない百合学だからこそのイベントだ。
これがある代わりに修学旅行なるものはないらしい。
今までの先代たちが宿で暴れ、町では喧嘩。
何処の宿もバス会社も受け入れてくれないのだという。
「たしか風呂は班ごとだったよな。しかも班は学年バラバラ……。」
昨日の午後、学年ごとに班決めがあった。
くじ引きだったが、私、大吉、諭吉、錦、桃里が同じ班だった。
ずるをしたとかないから凄いと思う。
さすが私の強運。
だが、二年と三年が誰かは知らない。
「風呂と飯盒炊飯以外は班とかごちゃごちゃになるだろうなー。」
「できれば学年ごとにしてほしかったぜ。紺が万が一にも銀聖と同じになる可能性があるから怖い。」
「大吉、それフラグだからやめろ!」
『そうだ!口に出すとフラグが立つんだからな!』
私と諭吉にどつかれた大吉は前のめりになって、転けそうになった。
まず、銀聖の前に風呂だ!風呂をどう乗り越えるか?
『……権力ある人間……校長?理事長?……弱み探すか。』
「「こっわ!」」
『は?二人も初日に先生脅してたじゃん!』
「校長はハゲだけど、理事長はこえぇよ!理事長は忙しくてあんまいないから紺は会ったことないだろうけど!理事長は若くてイケメンの腹黒だ!」
「自然学校は理事長も来るらしいぜ。言うこと聞かない不良たちも理事長には逆らえねぇからな。」
『他の先生たちの心もとなさがな……。』
あの乱闘大好き、喧嘩万々歳の百合学生を牛耳る理事長とは、一体どんな人間なんだろう。
超極悪人だったら面倒だなぁ。
「理事長は一昨年から来たらしくて、その時の犯罪も平気で手を出す荒れ果てた百合学生を全員ぶっ倒して今に落ち着かせた人らしい。」
『いや、生徒ぶっ倒しちゃダメでしょ。』
「それよりも当時の百合学は酷かったんだよ。警察も手を焼いてたからな。」
父も毎日馬車馬のように働いているもんな。
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