第88話
『───てなことがあったんだよ。』
「楽しそうねぇ。」
「友達できて良かったな?」
私は今、父と母とビデオ電話をしている。
ここに来てから今日が三人揃うお初の日だ。
『大吉と諭吉と錦は会ってほしい!』
「今度実家に遊びに行こうと思ってるのよねー。外でクロさんと友達誘ってご飯しましょう?」
「肉奢ってやろう。」
「『よっしゃーっ!!』」
父の言葉に母と二人で雄叫びを上げた。
そんな私たちに父は苦笑いしているように見える。
父も私と同じ無表情鉄仮面だから、家族の私たちくらいしか表情を読むことができない。
「紺は今男なんだろ?双子くんたちは組の人間だから知ってるんだろうが、その錦くんは知ってるのか?紺が女だって。」
『言ってない。なんか、仲良くなればなるほど言いづらいって言いますか。他の奴には言わなくていいと思ってるし、どう思われても何とも思わないんだけどさ……錦にバレた時が怖い、と言うかなんと言いますか……。』
日に日に募る錦への罪悪感。
私は祖父に出した条件も、ここに来たことも、男として学校に通っていることも後悔していない。
嫌々ここに連れてこられたが、まだ日は浅いがここにいる人たちが好きだ。
だからこそなのだろうか。
騙し続けていていいのか、と。
「それって、嫌われたくないって思ってるからでしょ!紺は隠し続けたいの?言いたくないの?」
『分からない。一人、言ってもないのに気付いた奴がいて、いつかバレるならそいつにだけは私の口から言わないといけない気がする。』
────「……甘くて、女の子の匂いだ。」
鼓膜を揺らした銀聖に言葉。
あれは確信していた声だった。
いつどこで何故、バレたのかは分からない。
これからどうしよう……大吉と諭吉に相談しないとな。
「言うか言わないかは紺次第だ。お義父さんは紺の条件を飲んで、紺の安全を第一に男として学校に通わせているんだよな。その子はきっと騙されたと傷付くよりも分かってくれる子だと思うよ。上手く行かなかったら父さんが慰めてあげるから、ゆっくり考えてごらん。」
「うん!ありがとう、父!母!」
掃除している時、錦に私は隠していることがあるよねと言われたことを思い出す。
錦が何を勘づいたかは分からないが、それが男装のことなのか柳のことなのか。
全部、いつか言えるといいな。
「で~?誰か好きな子はできた!?」
「あ、アオ……紺はそれ所じゃないだろ?な?」
『父、顔色が悪いぞ?』
恋愛かー。
恋愛なんかしたことないから、人を好きになることの友達と恋人の境目が分からない。
「やだー!クロさん、紺ちゃんもお年頃なのよ!?彼氏の一人や二人や三人や四人連れてきても可笑しくない!それに顔だけは可愛く生まれてきたんだもの!」
『おい、顔“だけ”だと!?』
「だってー!紺ちゃん仲良くなっちゃうとモテないんだもーん!暴れん坊で怪力がバレちゃうとダメなのよねー。」
「紺、紺は全部素敵だよ!お嫁になんか行かなくていい!」
父の親バカフィルターやっべー。
フィルター分厚いんだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます