第80話
よく見るとたーちゃんもボロボロで、立ち上がった大吉は臨戦態勢をとる。
壱は銀聖と他のメンバーを相手にして力尽きたみたいだ。
殺気を放つ麟太郎が銀聖と対峙し、ユウジと桃里も今にも殴り掛かりそうな怒気を孕んだ目で鴉メンバーを睨んでいる。
大吉を心配する諭吉がたーちゃんに襲いかかりそうで、それを錦が止めた。
「大吉の売られた喧嘩なんだから、俺たちはダメだよ。」
「でも!アイツ不死身って呼ばれるくらい体力馬鹿なんだよ!?」
『不死身?ジャングル出身のゴリラの間違いじゃない?』
「王者じゃねぇわ。普通の人間じゃ!」
「紺はほんとたーちゃんお気に入りだな?鴉に来れば、たーちゃんあげるよ?」
『え、いらない。ごつい。場所とるし。僕の友達に暴力振る奴はお気に入りじゃない。』
「あ”ぁん!?なんで俺が振られたみたいになってるんじゃ銀聖!!ッッ!!きたねぇなぁ?」
「隙見せたのが悪い。」
首を横に振って手でバツ印を作ると、何故か怒ったたーちゃんが私と銀聖を睨んだ。
そのたーちゃんの一瞬の隙を大吉がついて、鳩尾に重い一発をめり込ませる。
片膝を付いて苦しそうに咳をしたたーちゃんの顔面を狙って蹴りを入れようとしたが、たーちゃんが後ろに飛び退いて避ける。
白熱する二人と同時に、麟太郎たちも動き出した。
骨折している桃里は蹴りだけだが、小さい体で相手の攻撃を避けながら急所を狙っていく。
ユウジはパワータイプなのか、桃里ほどのスピードはないが、一撃一撃が重くて相手が吹っ飛んでいく。
『……起きてる?』
私と錦と諭吉は、地面に転がっていた壱を屋上の安全な端っこに運んだ。
親指と人差し指で持ったポフポフハンマーで壱の額を叩く。
「う”っ……なんで……っ!!鴉は!?」
『アンタの兄弟と仲間が戦ってる。あと僕らの仲間がね。』
喧嘩している彼等を見た壱は、困惑したような悲しそうな顔をしていた。
『悪いけど、アンタの過去を組長さんに聞いたよ。』
壱の母は壱が幼い頃に交通事故で亡くなり、父は會田組組長の側近の一人だった。
『父親が死んだのは、抗争で誘拐された麟太郎を助けた時だったんだろう?麟太郎を庇って敵の流れ弾に当たった。』
「はっ……?違う!!俺が聞いたのは、麟太郎を庇って誤って打った會田潤一郎の弾に当たって親父は!!」
『それ、誰から聞いた?會田の組長が言ったのか?』
「人殺しは簡単に嘘をつく!昔、組にいて親父に世話になったって言ってた男から聞いた!」
『嵌められたな。組長さんに聞いたあと、どうしてもアンタが“人殺しの血”って言葉が当てはまらなくて、その事件のことを“情報屋”に調べてもらった。』
車の中で錦に耳打ちしてお願いして分かったことだ。
あの組長の話が本当か調べてもらった。
初対面の裏の人間を信じられるほどのお人好しでもない。
しかし、組長の口から聞かなければ意味がない。
錦は優しい笑みを浮かべて交換条件を提示してきたことには肩を落とした。
強かさは大事ですね。
『その事件の時、狸じじ……組長さんはその場にいなかったらしいぞ。僕もそれが真実だと思う。麟太郎が捕まっていたのは、敵の本拠地だったらしい。そんなところに組長が飛び込むか?いくら息子がいたとしても、組長の首が取られたら終わりなんだぞ?』
「っ……嘘だっ……じゃあ俺は、そんな……っ!!あの人は……本当に親父と仲が良かったのに……なんで!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます