第76話
事務所を出て、桃里に麟太郎の部屋まで案内させた。
もうユウジも私を止める気はないらしい。
『おーいっ!麟太郎くーん!あーそーぼーっ!』
物音一つしない扉の向こうに、軽快なノックをかましてやった。
人がいるから気配はするからいるんだろうな。
「さすがに無理ありすぎだろ。こんなのどうやって引きこもり引っ張り出すつもりだ?てか本当にいるのか?」
『チッチッチッ!こういうのは黙っているうちに思いの丈を赤裸々に述べたのち、実力行使と相場が決まってるんだよ。』
大吉の目の前で人差し指を振り、肩をすくめて小馬鹿にしたように溜め息を吐いた。
即舌打ちが返ってきた。
「どこの相場なん?紺ちゃん、會田くんは煽って出てくるような単純とちゃうぞ。」
『マジレスすんなよ。マジレスは諭吉だけで十分だわ。ほらほら、二人は言いたいことないの?鉄仮面とか無愛想とか。』
「そ、れは……っ」
桃里はまだ言いたいことがあるんだな?
俯いた桃里の背中を思いきり押すと、ドアに頭を激突させていた。
『なにやってるの?』
「っ!お前が押したからだろ怪力野郎!!」
『早くしてよー。時間ないんだから!おーい!!カス太郎くん?ヒッキー太郎くん?とっとこ出てこーい!』
「……うるさい。帰れ。」
わーわー騒ぎ続けていると、部屋の奥から低い声が聞こえてきた。
寝てるかもと心配したが、杞憂だったみたい。
「麟くんっ!!!」
「麟太郎っ!!」
桃里とユウジがドアを叩き、桃里がドアの向こうの麟太郎に向かって声をあげる。
「麟くんっ!!俺、髑髏が好きだよ。強い麟くんのことも、怒りっぽい壱くんのことも、優しいユウジのことも。でも俺、ずっと昔に戻りたいってことしか思ってなかった。あの人とタカさんもいて皆仲が良くて……麟くんが変わった時、俺は待ってればいつか元の麟くんに戻ってくれるって!側にいようってユウジと決めた。でも本当は、麟くんに何があったか無視されても嫌われても殴られてももっとしつこく聞けば良かった!麟くん、ごめ……ごめんっ!」
「桃里……俺も、麟太郎が組のことで悩んでるの知っててお前にちゃんと向き合わなかった。悪かった……麟太郎、もう一度チャンスをくれないか!?一緒に壱と話しに行こう!」
「……アイツとはもう兄弟じゃない。話すことはない。帰れ。」
諭吉が私の背中を突っつき、「どうする?」と聞いてきた。
不安そうな諭吉の肩を叩き、ドアの前で麟太郎に声をかけ続ける二人の間に割って入った。
『麟太郎、お前はこうなること分かってたんだろ?あの日、壱が仕掛けてくるってこと。僕が憎いんだろう?お前の筋書きだと僕が邪魔しなければお前は刺されて重症か最悪命を落としていた。壱は敵討ちできたことになる。なんだ、悩むのも考えるのもやめて楽になりたくなったか。自己中野郎。』
「……黙れ。」
「紺くん、何言ってるの?」
『僕を呼びに行くのに、ユウジと桃里の二人を寄越したのはなんでかなーって考えてたんだよ。だって一人でいいんだもん。実際に鴉も揚羽もひとりずつ寄越してきた。桃里は麟太郎に「お前も行け」って言われてユウジについてきた。僕の推測だけど、桃里を巻き込まないためだろ?桃里は絶対に麟太郎側につく。怪我して喧嘩できない桃里は戦えず傷付く。』
「黙れ。」
『黙らせたいなら出てこいよ。でもお前は今、疑問があるはずだ。何故まだ自分は生きている?何故壱は、っく……』
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